意外と知られてはいないようですが高い負荷がかかったホイールには金属疲労による割れ(クラック)がみられる場合があります。つまり規定以上の重さ(荷重)や、トルクがかかると割れてしまうということです。こうなると危険ですので交換となります。
スポーク部(デザイン面)が割れたアルミホイール。もちろんホイールもタイヤ同様に重要な部品ですので注意が必要です。
<ホイールの経年変化による金属疲労及び腐食の問題。>
ここでホイールの経年変化による金属疲労及び腐食の問題についてお話しいたします。
スーパースポーツカー及びスーパーカーのホイールも15年以上経ちますと必ずと言っていいほどこれらの問題が深刻になると思います。ましてや過酷な条件で使われたホイールは金属疲労により本来の性能が発揮できない場合があります。又、腐食のためにチューブレス効果が期待できないものもあると思います。
以前にお客様のオーダーで、本国イタリアより LANCIA STRATOS の純正ホイールを取り寄せたことがあります。旧カンパニョーロのテクノマグネシオの日本代理店に問い合わせたところ、何とオーダーすれば作ってくれるという話でしたが、納期が余りにもかかるという事で直接探す事になりました。結局、メーカーにあったオリジナルホイール最後の4枚(当時もの)をLANCIA社から直接分けてもらうことになりました。現物が到着し箱を開けてみるとそこには赤茶色(ブロンズ)のワークスホイールが鎮座していました。30年前のホイール。持ってみると紙のように軽い!(マグネシウムの保有量が多いため)これには驚きました。しかし喜ぶのもつかの間、よく見ると大変な事に気付ました。ホイールの側面には細かい穴が。やはり未使用新品でもこうなのかと落胆しました。さらに塗装を剥離してみるとさらに2、3ヶ所腐食がみられました。 結局、それらの部分を全て取り除いて修正及び塗装し出来上がりましたが、さすがに実車に装着まではできませんでした。
アルミホイール及びマグネシウムホイールの場合保存状態にもよりますが、良い状態を保つには特に湿気等に気を使うのが重要です。
これは Ferrari F40のホイール。色々な所で話題になりますが、このSpeedline製のホイールは全くといっていいほどのレーシング用ホイール。肉厚はかなり薄く、クローズドのサーキットコースならいざ知らず、一般公道用としては疑問に残る程のものです。実車の車体重量が軽いとはいえ、478psというハイパワーをやはり高性能なタイヤとの組み合わせで路面に炸裂されるF40。走行時にかかるストレスは想像以上に大きいのです。
弊社の今までのF40の経験によりますと、一番多いトラブルはまずピアスボルトからのエアー漏れ。これは普通に起こります。 新車の状態で漏れているのも何台か確認しております。この原因はホイールが3ピース構造にあるのですが、サンドイッチされているはずのガスケットの厚みが極端に薄く、この部分に過度の負担がかかるものと思われます。 又、ブレーキの熱による劣化。これが一番の問題となります。スポーツ走行中のブレーキローターの表面温度は一般に700℃以上といわれており、特にハードなスポーツ走行をされた個体にこのエアー漏れが多いというのは、まずこれらが原因かと思われます。
これらを防ぐ為に私共ではある特殊なコーキング剤にて処理をしております。これは劣化したガスケット剤を除去した後に真空引きをしながら新たなガスケット剤を注入する方法です。これによりタイヤ交換後のエアー漏れは止めることができます。 又、補強の面からも確かな効果が証明されております。
次に金属疲労及びホイールの歪みについての問題ですが、Ferrari F40に限らず大口径ホイールは路面に対する負荷が大きく、走行中はいつも歪みという危険にさらされております。つまり路面の衝撃を吸収しきれない場合が多いということです。 ご自分で路面の凹凸などに気を使っている方はまだしも、一般にタイヤ交換前に検品してみると以外に歪みがでている場合が多いと思います。頻度はさまざまですが、外見では分らなくてもバランサーで点検してみるとはじめてわかります。 上下、横方向を回転させながらチェックすると新品時には止まって見えるものが、歪があると振れてみえるのです。 0.5mmの振れでも滑らかな乗り味は期待できないわけで、いくらバランスウェイトのみのバランス調整を済ませたところでハンドル振れ等が直らないという事はよくある話です。この場合、新品に交換するかもしくはある程度は修正が可能ですので、どちらかの選択が望ましいと思われます。